遺言書は、遺書ではありません。相続紛争予防契約書です。
相続問題というと富裕層のトラブルとイメージする方も多いと思います。
しかし、現在、相続問題が調停・裁判に発展するケースで、相続財産の金融資産・不動産等の合計額が5,000万円未満の紛争は全体の約80%になります。
例えば、東京都内にお住まいの方で、マンション1物件だけ所有していても預貯金と併せて5,000万円近い方は非常に多いと言えます。仮に住宅ローン返済中の方がお亡くなりになった場合には団体信用生命保険で完済され債務は消滅するケースが殆どですので、5,000万円という数字は、実に身近な金額であります。
現在、遺言書を作成されずにお亡くなりになる方は、10人に9人の約90%であり、その約90%の相続の中からが紛争が多発して「争族」となっております。
そして、相続財産5,000万円未満の紛争が殆どであることから、実に身近な問題
であります。
勿論、遺言書があっても効力を巡って紛争に発展するケースもあり、遺言書が万能ではありませんが、そのようなケースはごく一部であり、殆どが遺言書どおりの相続が行われていると言っても過言ではありません。
遺言書に対して遺書をイメージする方も多いのですが、遺書は財産を遺す遺言書でありません。逆に、財産を遺す遺言書は、遺書ではありません。
遺言書は、相続紛争予防契約書です。
相続紛争の要因
被相続人から相続人への遺言書が作成されずに相続が開始した場合には、法定相続となりますが、下記の(1)(2)(3)の問題から相続紛争に発展することが非常に多いのが実情です。
(1)法定相続による問題-遺産分割協議の紛争可能性-
相続は、相続開始日(死亡)から発生します。 相続財産を遺す人を被相続人、相続財産を相続する人を相続人といいます。
相続人が1人の場合、相続の紛争になることは稀です。
多くの場合、被相続人が遺言書を作成することなくお亡くなりになり、相続人が 2 人以上いるために相続の紛争が発生します。
被相続人が生前に相続人に対する遺言書を作成しなければ、民法に規定された法定相続となります。
法定相続となった場合には、例えば、土地や建物、預金や貯金、株式などの相続財産が共有されることになり、遺産分割協議が成立するまでの期間は、相続財産を自由に処分することができなくなります。
例えば、一定金額以上の預金以外には自由に引き出せませんし、土地や建物を自由に使ったり売ったりすることもできません。
そこで、相続人全員が協議して、相続財産を各相続人に分割して帰属させる遺産分割協議書を作成する必要がありますが、相続人間で遺産分割協議が決裂した場合に相続の紛争に発展する危険性が高くなります。
(2)相続人関係の問題-相続人間の対立-
① 被相続人に子がなく相続人が被相続人の配偶者と被相続人の兄弟姉妹がのみの場合
② 被相続人の相続人が戸籍上の配偶者であり、事実婚(内縁)の配偶者がいる場合
※事実婚(内縁)の配偶者には相続権はありませんが、被相続人が事実婚(内縁)の配偶者に対して全財産を遺贈する遺言書を作成した場合に、戸籍上の配偶者から事実婚(内縁)の配偶者に対して遺留分減殺請求(配偶者の法定相続分1/2の半分の1/4が遺留分で、事実婚(内縁)の配偶者に対して遺贈された相続財産価格の遺留分相当価格の金銭支払請求)をして相続の紛争に発展するケースとして記載しました。
③ 複数の相続人(子)のうち1人の相続人(子)が被相続人(親)より先に死亡し、死亡した1人の相続人(子)に子(被相続人の孫=代襲相続人)がいる場合
④ 複数の相続人(子)の中のうち1人の相続人(子)に他の相続人(子)とは面識の全く無かった被相続人(親)の非嫡出子(認知した婚外子)がいる場合
など、他にも様々な場合があります。
(3)相続財産自体の問題-相続財産を巡る対立-
① 相続財産に、高額な不動産と少額な金融資産(現金・預貯金・有価証券等)がある場合
② 相続財産に、低額な不動産と金融資産(現金・預貯金・有価証券等)がある場合
③ 相続財産に、高額な鑑定を要する動産(絵画・掛け軸・陶器その他骨董品等)がある場合
④ 相続財産に、第三者との共有不動産がある場合
⑤ 相続財産に、多額の債務(負債)がある場合
など、他にも様々な場合があります。
法定相続問題の具体例-遺産分割協議の紛争可能性-
事例 遺言書無し
相続財産総額4,800万円
内訳:預金300万円、株式時価500万円、マンション3,800万円
問題:マンション3,800万円の相続
① 配偶者と子2人
相続人:配偶者 相続金額:2,400万円 相続分:1/2
相続人:長 男 相続金額:1,200万円 相続分:1/4
相続人:長 女 相続金額:1,200万円 相続分:1/4
② 子2人だけ
相続人:長 男 相続金額:2,400万円 相続分:1/2
相続人:長 女 相続金額:2,400万円 相続分:1/2
③ 配偶者、子1名、孫1名(死亡した長女の子)
相続人:配偶者 相続金額:2,400万円 相続分:1/2
相続人:長 男 相続金額:1,200万円 相続分:1/4
相続人: 孫 相続金額:1,200万円 相続分:1/4
④ 配偶者、父、母
相続人:配偶者 相続金額:3,200万円 相続分:2/3
相続人: 父 相続金額: 800万円 相続分:1/6
相続人: 母 相続金額: 800万円 相続分:1/6
⑤ 配偶者、兄、妹
相続人:配偶者 相続金額:3,600万円 相続分:3/4
相続人: 兄 相続金額: 600万円 相続分:1/8
相続人: 妹 相続金額: 600万円 相続分:1/8
行政書士は遺言書と遺産分割協議書の書面作成業務に携わることが行政書士法で認められています。しかし、法務局への不動産の所有権移転登記等の登記申請代理行為を行政書士が行うことを司法書士法で固く禁じており、行政書士が違反した場合には非司法書士行為として処罰されますので、相続に伴う登記については提携している司法書士に別途依頼いたします。また、紛争性が認められる相続の法律代理人行為を行政書士が行うことを弁護士法で固く禁じており、行政書士が違反した場合には非弁護士行為として処罰されますので、紛争性が認められる相続については連携している弁護士法人をご紹介します。
さらに、御相談内容が取扱業務以外の専門業務については連携している行政書士をご紹介します。
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